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夜はとても静かな時間だ。日中はせわしなく活動している人間も、夜には床に就き眠りの世界に落ちてゆく。夜遅くに帰宅するとどの家の明かりも落とされ、辺りは静寂に包まれている。生きている者は自分しかいないのでは?と不安になるくらいに何の物音もしないのだ。日の高いうちには、人間は自分が世界の主役たる面持ちで街を闊歩する。その背景たらんとする街は、主に図体の大きな建物によって演じられる。どんなにそれが大きくても、人間様の存在感には勝ちやしないのだ。あくまで日中は背景である。そんな彼らも、夜には何よりも重々しい存在となる。昼間の雑踏がまるで嘘のように、彼らは世界に沈黙を強いるのだ。
夜は静かなもの、その静けさは我々人間が作り出した街によって実現していたのだ。街は生みの親である人間しか許さない。木々が風に揺れる音も、高層ビルが許そうとはしない。森に生きる野生動物の夜の世界も、満天の星空が地上を照らすことも許さない。矮小な人間が昼間にせかせかと生きることをただ許すに過ぎない。そして人間が眠りについた夜には、彼らだけの静かな空間を楽しむのだ。
そしていま、私はこの空間に足を踏み入れてしまっている。不自然で人工的な静けさが怖くなる。この中で人間は目を覚ましてはならないはずなのに、私はなにを堂々と歩いていたのだろう。私は夜の世界の異端者だ。いつかは裁かれる。
そう怯えながら、一方で生に満ち溢れた本来的な夜を強く強く想う。悠久の歴史の中、本来的な夜はずっと存在を主張してきた。そしてきっと今なおどこかにいるはずなのに、私は知りもしないのだ。けれども私は本来的な夜を探している。この街で培った拙い想像力と、ほんの僅かばかり遺伝子の記憶に残った野生を頼りに、私は本来的な夜を想うのだ。