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「読書の秋」「芸術の秋」「スポーツの秋」……。秋には色々なあだ名がある。日本人の秋好きをよく表していると見ることもできるし、春・夏をぼんやり過ごしすぎたので冬眠までの最後のチャンスに何でもかんでもやってしまえ、という意味にもとれる。まあ、そこまでひねくれずともよかったか。
「味覚の秋」というのもある。秋刀魚や蟹、松茸といった海の幸・山の幸がちやほやされるが、そんなことよりくだものが美味しいので、私は秋が大好きである。
八月の中ごろ、農家をやっている埼玉の親戚から桃がたくさん届いた。桃を秋のくだものというのには多少抵抗があるが、「くだものの季節」の到来を告げてくれることには違いない。今年の桃は天候に恵まれ、水気が多く、甘みも強かった。せっかくたくさんあるのだから、少しずつ食べて長い間楽しみたいが、完熟した桃たちはすぐに痛んでしまうのでそういうわけにもいかない。知り合いに分けたりもしながら、一週間くらいで食べきった。
今はというと、梨が最盛期。形がよく似ていることから、しばしば林檎と比較される梨だが、見た目の美しさはともかく、味では梨の方が格段に上だと思う。こちらも、みずみずしさと強い甘み。そして、独特の肌理のあらさに由来する爽快な歯ごたえ。桃にはときどきとんでもなく渋い「ハズレ」があるが、梨にはめったにないのもありがたい。ひょっとすると、私の一番好きなくだものかもしれない。
そして、秋の終わりを告げるのは、何といっても柿である。すこし肌寒くなる時期、スーパーの果物売場にうず高く積まれた柿の山は実に圧巻である。あの皮の色はなんと言ったらいいのだろうか、「オレンジ色」も「だいだい色」も柿の形容に限ってはそぐわない。かといって「柿色」というのは柿渋の色のことだからかなり違ってくる。妙な課題にぶち当たってしまった。さて、柿といえば、熟しすぎてやわらかくなったのが好きだという通の方もいらっしゃるが、私はむしろ固めの実を大ぶりに切ってガリガリとほおばるのが好きである。本当に甘い柿は、固いあいだのほうが鋭く甘い。熟すにしたがって甘みがぼんやりとしてしまう。
桃・梨・柿。秋を代表する三つのくだもの。それぞれに特徴があり、魅力的だ。三つの最盛期が少しずつ違い、市場における主役の座を分け合っているのも心憎い。秋を三つの期間に分けて、「桃秋」「梨秋」「柿秋」などと名づけたくなる。
林檎や蜜柑が本格的に出始めると、いよいよ冬支度。読書も芸術鑑賞もスポーツも、忙しくて思うようにできなかったなあ、と嘆いて、日本人は過ぎてゆく。