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最近読んだ本。安野光雅,俵万智両氏の著書,「そこまでの空」。安野氏が絵を描き,俵氏がうたを添えた,ちょっと不思議で,深い本でした。絵とうたは決して直接関係しているものではないのですが,それぞれに独特で,それでいて何か繋がっているようで,読む人ごとに意味づけ出来るとも言える,なんとも捉えがたい芸術でした。その中のうた,一つ。
絵葉書はそこまでの空「明日からはここにいない」という語残して
表題にもなっているうたですが,何とも新鮮でした。世界中の風景から一枚切り取れる絵葉書のしめす空間の広さと,明日既にいない,という一瞬の時間の差,それから絵葉書を送った人に広がる空間の広さと,受け取った人が送り手の言葉を聞いているしかない空間の狭さの対比,そして「そこまでの」という表現。普段あまり短歌に親しまない筆者ですが,これには読むのを止めて思いにふけってしまいました。
恋のうた,でしょうね。きっと。なおかつ秘めた思い。でもお互いうすうす気づいてる,そんな感じではないでしょうか。想像でもわがままですね。絵葉書というのが,二人の距離を曖昧にしていて(もしかしたら,近いのに絵葉書なのかも),そして明日いない,とだけまた曖昧に書いて。近づけそうで近づけないこの微妙な感じ…と書くと俗に聞こえる感情をとても黙して伝えているように感じました。
少ない字数で表現を尽くす短歌と,文字を用いずに表現を尽くす絵の共存,同時にその隙間,何か単なる歌集でも画集でもない,恋のうたでも絵との隙間から単純にそう思わせてくれない,不思議な本でした。
筆者の幼稚な感想文などが参考になるのかどうかあぶないところですが,今日はこの本の紹介ということにします。
「そこまでの空 -俵万智の贈りもの」 安野光雅,俵万智 河出書房新社,1998年