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本格的に寒くなってきた。身にしみる寒さをいかにして表現するか。文学的な一大問題であろう。

私の思う最高の答えは、高校時代に習った一首の短歌にある。

 

志賀の浦や 遠ざかりゆく波間よりこほりて出る有明の月

 

 新古今和歌集の第639番目に収められた、藤原家隆の歌である。なんとも、よむたびにぞっとする、見事としか言いようがない。

 高校の授業では、この歌を「本歌取り」の説明という文脈で習った。この歌は、後拾遺和歌集の第419番、快覚法師による

 

さ夜ふくるまヽに汀やこほるらん 遠ざかりゆく志賀の浦波

 

を念頭に置き、主題を借りて詠まれている、ということである。そうすることで一首の中に二首分の情報量と、それ以上の情感を込めることができる。要するに、使うとお得だけれど、使うのはなかなか難しい修辞技巧なのである。

 技巧的なすばらしさはともかくとして、この凛とした清艶さはどうだろう。とても言葉による表現がなしうる業とは思えない。夜が更けて、水際から少しずつ凍ってゆく湖面。ピシピシ……という頭痛を誘うような音が聞こえてきそうだ。そしてそこから凍った月が登場する。注意してほしいのは、この月が「氷のような月」ではなく、「それじたい凍った月」であるという点である。水の氷点は零度だが、月の氷点はあきらかにそれよりも低い。さらにこの月は三日月を反転させたような細長い形であると推定され、硬くて鋭い刃物のような強烈な印象をよむ者に与える。

 寒いのは嫌いだが、一度でいいからこの歌の景色を見に、琵琶湖に出かけたいと思っている。おそらくそれは、作者家隆すら実際には見ていない、幻の情景であろう。
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