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 負けん気を出すわけではないが、手元に『現代語から古語を引く辞典』(芹生公男編、三省堂)と『岩波古語辞典(補訂版)』(大野晋ら編、岩波書店)という強い味方がいるので、試しに引いてみる。

 『現代語から…』で“かおる”を引くと、「かをる(香)」「きこゆ(聞)」「くんず(薫)」「にほふ(匂)」の四語が載っている。“におう”を引いてもほぼおなじことである。いくらなんでも嗅覚情報を表す語彙がひとつということはなく、四つほどは使い分けがあったらしいことがわかる。

 次にこれらの単語を、大野氏への追悼の念を込めつつ、それぞれ『岩波古語辞典』で調べる。同辞典は、基本語の語源や同義語の相違点などについての解説が群を抜いて詳しい。「かをる」については、《煙・火・霧などが、ほのかに立ちのぼって、なびきただよう意。転じて、匂い漂う意》、「にほふ」は《ニは丹で赤色の土、転じて赤色。ホ(秀)はぬきんでて表われているところ。赤く色が浮き出るのが原義。転じて、ものの香りがほのぼのと立つ意》という丁寧な説明が施されている。「きこゆ」は《聞キの自発・可能・受身の形。エは自然にそうなる意》であり、ここから「匂って来る」という意味が派生した。「くんず」は「薫」という漢語をサ変化したものであるため語源解説はなく、「(香が)香る。匂う。」という一般的な意味のみが載っている。

 四つの単語を辞書で引いたからとて、何か画期的な発見があったわけではないが、どうやら日本語には、初めから嗅覚由来である単語が皆無であるということがわかる。においに関する語彙はすべて、視覚や聴覚からの転義でできあがっているのである。そして、「続嗅覚論」で鋭く指摘されているように、これらの語は(主に人物の)「総合的な美しさ」を表すものである。日本語には嗅覚語彙が乏しいと言えばそれまでだが、感覚をいたずらに区分けすることなく、全体から「におい立つ」雰囲気を様々な言葉で表現したのだと積極的に捉えてみてもよいだろう。

 勢いで『漢字源』(松本昭ら編、学研)を開く。【香】の篆文は「黍(きび)+甘(うまい)」で、きびを煮たときに、空気に乗ってただよってくるよいにおいをあらわす。【薫】は、香草のにおいがもやもやとたちこめることがもともとの意味だそうだ。中国では直接的にもののにおいを表現していたことがうかがい知れる。

 時には調べ学習もおもしろい。
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