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午前8時ちょうど発のバスを待っていたら、道の反対側にゴミ収集車が止まった。粗大ゴミの回収に来たようだ。頑丈な体つきの若い清掃員が二人、助手席から飛び降りて車の背後に回る。走行中のエンジン音とは打って変わって、ゴミ処理装置の刃を回すモーターが高らかにうなり始めた。
清掃員に担ぎ出され、街路樹の陰から姿を見せたのは、本棚とソファーそれぞれ二つずつだった。多少古めかしい感じはしたが、使えないほどボロボロには見えない。引越か何かの際に邪魔になったから、廃棄されることになったのだろう。
手始めに清掃員が本棚の小さい方を持ち上げ、横向けにして処理装置に突っ込む。本棚は、激しく音を立てながら、瞬く間に回転刃によって喰い潰されていく。みるみるうちに本棚の形状を失い、木片の集積へと化した。大きいほうの本棚も二人がかりで抱えられ、刃と刃の間にタイミングよく押し込められて機械の餌食になった。
ソファーの最期はもっと残酷だった。機械の刃は、あのやわらかい綿の上から無理やりに噛みつき、木でできた内部の骨組みをバラバラにした。そしてその破片が、綿を引き裂き表面の布を破った。
本棚とは、本やその他の小物を置くための道具である。ソファーとは、快適に座るための道具である。彼らが本棚として、あるいはソファーとしての機能を持つのは、ひとえに彼らが本棚の形、ソファーの形をしているからである。道具というものはおよそ、その機能に見合った特有の形状を持っているのである。あの本棚は、処理装置に呑み込まれる直前までは、間違いなく本棚であった。そして彼の「本棚性」は一瞬で暴力的に消えた。
我々は日々モノを捨てるけれど、未だ形状を保ち、道具としての機能を果たしているのに捨ててしまうことが意外に多い。「壊すは易し、創るは難し」……多くは語らなかったけれど、今やあの清掃車の胃袋に収まった彼らから、そんな訴えを受けとった気がした。